2019年6月12日水曜日

トヨタの経営分析 第一回(ビジネスモデルキャンバス)

日本の主要な産業は自動車産業であり、世界と胸を張って戦うことが出来る重要な産業である。
今回は、自動車中でも日本だけではなく世界のリーディングカンパニーであるトヨタの今後の戦略をビジネスモデルキャンバスを元に明らかにしていきたい。


※本記事を執筆する上で参考とした資料:2018年度トヨタアニュアルレポート


トヨタの今後の戦略の中心となっているは、上記レポートの結果からMaaS(モビリティアズアサービス)だと思われる。
MaaSとは、簡単に端折って言うと最新のテクノロジー(自動運転やIoT等)を用いて移動をもっと効率的に、もっと便利にしようという事だ。

今回はビジネスモデルキャンバスを元に、トヨタのMaaS戦略を整理する。

  • キーパートナー
  • キーアクティビティ
  • キーリソース
  • 顧客セグメント
  • 提供価値
  • 顧客との関係
  • 収益の流れ
  • コスト構造




キーパートナー



国外のパートナーとしては
全世界に配車サービスを展開してるUberや、東南アジア配車サービス大手のGrab社、

国内のパートナーとしては、
JapanTaxiと協業を行い、MaaSのサービス展開をより円滑に行う為のスキームを組んでいる。
そしてMaaSのさらなるサービス拡張を視野に入れて、IoTやデータ利活用を見据えてソフトバンクとも連携を図っている。

日産はDeNAと協力し横浜等で自動運転の実証実験を行っているが、トヨタのこのスキームを見る限りでは、日本のトップ企業としての手堅さを感じる。



キーアクティビティ


MaaSを実現する上でのキーとなるアーアクティビィティとして、一般的に思い浮かぶのは自動運転かもしれないが、私は自動運転は幻想だと考えている。
そもそもAIは、人が与えたデータを元に正しい判断をプログラムが下す仕組みだ。
その為、中身は統計的な数式となっている。

※こういう場合においては、こうなる確率が90%だからこうしよう。
※こういうシチュエーションにおいては、こっちの確立が80%だからこうしよう。

上記判断をしているだけなのだ。
そして、「こういう場合」「こういうシチュエーション」で「こうなる確率」というデータは、人間がプログラムに与えないといけない。
つまり、AIは人間が与えた情報以上の事は出来ないのだ。

人間の行動もある程度は型にはめることが出来ると思うが、それは100%ではないと思う。例外は常にあるのだ。
この例外を、人の命が係わる車の運転で許容できるのかというと、許容できないのではないかというのが私の考えだ。

この点についてはトヨタも認識されているようで、ショーファー(自動運転)の他に、ガーディアン(高度安全支援)についても十分な紙面を割いてアニュアルレポートの中で説明をされていた。

※AIによる自動運転は不可能だと言っているが、それは予測不可能な人間が運転する車も混ざっている状態では不可能だと考えるのであって、この先社会の制度や法規制により人間が運転する車とAIが運転する車の領域を明確に分離する事が出来るようになれば、実現は可能だと考えている。

最後にMaaSを実現するにあたっては、従来の車の技術だけではなく、MaaSを提供するプラットフォームが重要になってくる。GoogleやAWSといったプラットフォームが軒並み外資に席巻されている現状を考えると難しいのかもしれないが、日本の経済を牽引しているトヨタには頑張って頂きたい。



キーリソース


これについてはMaaSに限ったことではないが、トヨタのキーリソースは人だと考えている。
私も、トヨタの社風やカイゼン、なぜなぜ分析について、何冊か手に取り勉強をさせて頂いたが、特にカイゼンは素晴らしい。
常に問題意識を持つことが推奨されており、それは役職に応じて高度化する。

  • 一般社員
標準と現在の状況の際を分析して改善点を明確化する。

  • 管理者
社会の情勢などから、今後のあるべき姿を策定し、現状との差異分析により、改善点を明確化する

これらを常に考え、社員の習慣になるまで教育が徹底されている。
こういう社風を作る事は早々に出来るものではないし、この姿勢があればMaaSだろうが、この先の新しい変化に対しても柔軟に対応していけると信じている。



顧客セグメント

MaaSに関しては、特に顧客セグメントがあるわけではなく、全ての消費者が顧客になりえると考える。消費者は皆、経済活動や社会生活を行う上で移動する事が必要となる為だ。



提供価値


提供価値に関しては、
  • 純粋に移動手段を提供する価値
  • 二次的な価値として、移動状況等の情報の価値
がある。
前者に関しては、ライドシェアや自動運転による価値提供となるが、後者社は保険会社やレンタカー会社に対する事故や、運転状況の提供、そして官公庁に対しては道路の利用状況などのオープンデータの提供が考えられる。

提供価値に関しては上記に挙げた価値以外にもリアルタイムに様々な情報が取得/提供できるようになるだろう。
今は、桜の開花状況や、観光地の混雑状況をTwitterなどのSNSで確認する人も多いと思うが、そういった情報もMaaSを元にリアルタイムに収集し提供できるようになると考えている。



顧客との関連



顧客との関連に関しては、今後資本をベースにコスト戦略で顧客の獲得につなげ、トヨタマイレージなどの仕組みでスイッチんコストで顧客を維持する戦略が一般的かと考えている。
但し、この顧客との関連についてもMaaSで収取した移動情報や利用履歴などから、個人個人に対応したMaaSを提供できるようになるとさらに顧客との関係性をより強固なものにできると思う。

こういった関係性を構築する為にも、やはり様々なサービスやプラットフォームと連携するMaaSのプラットフォームが必要になってくるだろう。



チャネル


何度も同じことの繰り返しとなるがMaaSのチャネルとしては、プラットフォームが必要。
本領域に関してはUber等の外資が先行している為、今後どういったポジションをトヨタがとっていけるかは分からないが、最初は有力企業と協業するにしても、業務をコントロールし利益を最大化する為には自前のプラットフォームが必要になる。
トヨタの取り組みとして、MSPFがあるが、これがどのスコープ迄見越したプラットフォームなのかは今後調査を行い、記事にしていきたい。



収益の流れ


収益については、MaaSの利用料金と、MaaSプラットフォームの営業を目的とした利用料金になると考える。



コスト構造


これについては、上記分析の通り、車の製造コスト、MaaSプラットフォームの維持費用と設備投資費用がコスト構造になると考えている。



最後に総括として

トヨタは今後MaaSを実現する事により、GoogleやFacebookと肩を並べる情報産業に変貌する可能性を大いに秘めていると考えている。その為には自動運転等の技術の他に、MaaSプラットフォーム等ITの技術が必要となってくる。
繰り返しになるが、この領域は、Google、MS、Amazon、Uber等外資に席巻されており正面からは難しいと思うが、トヨタブランドそして今まで培ってきた技術力で、世界に肩を並べるプラットフォームを構築して頂きたいと考えている。

今後も動向に注力しつつ、応援をさせて頂きたい。

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