2012年からはLOHACOという一般消費者向けのネット通販も開始しています。
特色としては、ASUKUL Logi等の物流も行っており、当社の競争戦略の「オフィスで必要な1本の鉛筆を明日必ずと届けること」を実現すべく、当日配送、翌日配送サービスを実施しています。
アスクルは言わずと知れた、法人向けネット通販の老舗企業です。
それが、なぜ営業利益率1%と殆ど利益を出せていないのか、今回は同じ法人向けネット通販業態のMonotaROと比較しながら、その理由に迫っていきたいと思います。
粗利に違いはあるのか?
- アスクルは、売上約3600億円に対し、粗利約850億円で粗利率は23.7%
- MonotaROは、売上約1000億円に対し、粗利約320億円で粗利率は、29.2%
ネット通販の為、商品を仕入れた金額と、販売した金額の差額が粗利となるが、どちらも大きな違いはなく、粗利率20%~30%台は小売業としては妥当な値になっております。
粗利に対する販管費に違いはあるのか?
営業利益は、粗利から販管費(販売費および一般管理費)を引いた金額となりますが、これが本業で稼いだ利益となります。
- アスクルは、粗利約850億円に対し、販管費は約813億円で、販管費率は95%
- MonotaROは、粗利約320億円に対し、販管費は約180億円で、販管費率は57%
アスクルは、粗利のほぼ全てを販管費で食い潰しており、まったく利益を出せていない状況となっています。これがアスクル営業利益率1%の原因です。
ただここでさらに疑問がわきます。なぜMonotaROは販管費率57%なのにアスクルは95%も掛かっているのか?
考えられる理由は、
- アスクルの財務諸表は、2018年度5月期の決算書を元に記載している為、2017年の火災の影響が尾を引き、未だに利益を出せない体質となっている。
- アスクルとMonotaROでは、販管費の構成や構造が異なる為、販管費率に大きな違いが出ている。(例えば広告費に多額の費用をかけている等)
- 上記1でも2でもない場合は、単純にアスクルの生産性が低く、ムリ、ムダ、ムラが多く、他社に比べて多くの販管費が掛かってる。
上記仮説に対して掘り下げて、分析を進めます。
1.火災が影響しており、販管費が増大しているのか?
2017年に発生した倉庫火災ににより、自社で業務を遂行できなくなり、外部に業務委託する必要が発生し、販管費を圧迫している可能性が考えられます。
その為、2017年火災以前の2015年と、2016年の販管費率を見ていきたいと思います。
- 2015年度、粗利約600億円に対し、販管費540億円で、販管費率90%
営業利益率2.4% - 2016年度、粗利約700億円に対し、販管費610億円で、販管費率87%
営業利益率2.4%
2018年度の販管比率に比べると低い値で推移している為、2018年度は少なからず火災の影響により販管費を圧迫していると思われますが、ただ依然として他社と比べると販管費率が高い為、昔から高コスト体質だったことが伺われます。
2.アスクルとMonotaROでは、販管費の構成が異なるのか?
販管費は、人件費、業務委託費、設備や建物などの賃貸料、広告宣伝費で構成されますが、この構成がアスクルとMonotaROで大きく異なる為、販管費率に大きな開きが出ているのか見ていきたいと思います。
アスクルは、MonotaROに比べて人件費の割合が10%低くなっていますが、その分業務委託費が20%高くなっています。これは、前述の火災が影響して業務委託費が多くなっているだけで、特段に人件費を多く使っている訳でもありません。
また、広告や宣伝等のマーケティング活動に投資を行っているから販管費率が高いのかとも思いましたが、広告費は殆ど使っていませんでした。これは昔からの老舗企業の強みかも知れません。
その他が21%もあるのが気になりますが、総じて見ると特に他社と比較して販管費の使い方が異なるという訳ではなさそうです。
3.営業利益率が極端に低いのは単に生産性が低いだけなのか?
アスクルの戦略である、「オフィスで必要な1本の鉛筆を明日必ずと届けること」を実現すべく、当日配送や翌日配送を行っている事が理由かもしれませんが、社員一人当たりの生産性が、MonotaROと比べて1/3の生産性となっています。
つまり、現時点におけるアスクルの業務効率性や生産性は低い為、単純に何をするにしてもMonotaROより多く費用が掛かっていると言えます。
これが営業利益率1%の理由だと私は考えます。
- アスクルは、社員数約3200人に対し、粗利約850億円の為、社員一人当たりの粗利は、2600万円
- MonotaROは、社員数480人に対し、粗利約320億円の為、社員一人当たりの粗利は、6600万円
但し、逆の見方をするとMonotaROというベンチマーク対象の企業が存在する為、まだまだ伸びしろがあるという見方もできると思います。
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